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【#熱狂大学スポーツ 沖縄エリア編 Vol.1 沖縄大学男子バスケットボール部】二人の主将が導くチームビルディング 1部昇格への挑戦
文・写真:酒井梨奈(中京大学4年)

沖縄の大学バスケットボールには、地域特有の特色がある。たとえば、大学チームが高校と練習試合を頻繁に行うことがあるほか、応援には指笛や沖縄の民謡が使われる。選手の多くは県内出身者で構成されており、地域密着型のチームづくりが行われている。こうした環境の中で活動しているのが、沖縄大学男子バスケットボール部である。

このチームは現在、久保海翔(くぼ・かいと)選手と國吉啓(くによし・けい)選手の2名が主将を務める体制をとっている。練習メニューの構築や戦術面を担うのが國吉選手、組織運営やチーム内のコミュニケーションを担当するのが久保選手という形で、明確に役割を分担している。互いの強みを活かしながらチームを支えるこの「ダブルキャプテン体制」は、約30人の部員を擁する現在のチームにおいて、機能的かつ効果的なリーダーシップの在り方となっている。
二人が大学でもバスケットボールを続けているのには、共通の理由がある。それは「高校時代にやり切れなかった」という想いである。久保選手は、宮古島という離島の出身で、強豪校に所属していたわけではなく、全国大会や九州大会といった大きな舞台を経験することができなかった。さらに、新型コロナウイルスの影響で大会への出場機会が失われたことも心残りとなり、大学進学後も競技を続ける道を選んだ。一方、國吉選手の高校時代の所属チームは全国大会への出場は果たしたものの、國吉選手自身は大会当日に新型コロナウイルスに感染し、出場できなかった。全国の舞台に立つという目標が目前で叶わなかった悔しさから、大学で再挑戦する決意を固めた。
進学先として沖縄大学を選んだ理由には、県内での競技レベルの高さや指導者とのつながりがある。特に、沖縄県では大学バスケ部の数が少ないため、高校と大学の練習試合が日常的に行われている。國吉選手は「高校のときから沖縄大学と何度も試合をしていたので、進学後のイメージがしやすかった」と語っている。
一方、練習環境は決して恵まれているわけではない。大学にある体育館は1つであり、フットサルやバレーボール、バドミントンなど複数の団体と使用時間を分け合っている。トレーニング器具も十分ではなく、選手たちは各自ジムに通って筋力トレーニングを行っている。限られた施設の中でも選手一人ひとりが自律的に動く体制が根付いている。
近年の大きな変化として、部全体の練習参加率の向上がある。かつては、登録部員のうち5〜6名しか練習に来ない日もあったという。沖縄では、親族のつながりを重んじる文化が根強く、たとえば晴明祭(シーミー)という親族が集まってお墓参りにいく行事がある。加えて、沖縄県は公共交通機関が発達していない地域がほとんどで、移動手段の確保が難しいことも練習参加を妨げる一因となっている。
こうした状況を踏まえ、久保選手と國吉選手が中心となって練習出席に関するルールを整備。行動に一定の制限を設け、チームとしての意識を高める取り組みを行った結果、現在では20名以上が安定して練習に参加している。
競技面では、県内の選手に多く見られる課題である「身長や体格で他地域の大学と比較して不利な点」を踏まえ、「走力と機動力を活かすスタイル」を重視した練習へと転換した。ボールを使わない走り込みのメニューを長く取り入れ、1時間以上基礎体力と脚力の強化に充てるなど、質の高い練習に取り組んでいる。
沖縄県では、学連(学生連盟)による大会運営ではなく、沖縄県バスケットボール協会が中心となって試合を主催している。これにより、大学対大学だけでなく、高校生や社会人チームとの対戦も多く、内地(本土)の大学と比べて、自校の競技レベルを客観的に評価しづらいという課題もある。
現在、沖縄大学男子バスケットボール部が掲げる目標は明確だ。6月の沖縄県大会での優勝、そして九州二部リーグでの全勝を達成し、インカレチャレンジマッチへの出場を果たすこと。さらに、一部リーグへの昇格を視野に入れ、日々の練習に取り組んでいる。また、競技結果だけでなく、「応援されるチームであること」「当たり前のことを当たり前にやること」「継続力・競争力・基礎の重視」など、行動指針を部内で明確に共有している点も特徴の一つだ。
久保選手は「試合中に声を出してチームをまとめること」を、國吉選手は「試合の流れが悪いときに修正する役割」を魅力としている。ふたりは「言葉」と「プレー」、それぞれの方法でチームを支えており、それがダブルキャプテン体制の強みでもある。
オフコートでの活動も活発で、選手間の交流は多い。練習後や遠征時には、温泉に行ったり、外食したりするなど、学年間の垣根を越えた関係性が築かれている。こうした日常の積み重ねが、チーム全体の一体感につながっている。
沖縄大学男子バスケットボール部は、設備や地理的条件に左右されることなく、できることに真摯に取り組む姿勢を貫いている。久保選手と國吉選手を中心に、県内出身の選手たちが一丸となって目標に挑むこのチームの今後の成果が注目される。









